九谷焼の名工・北村 隆氏の工房「竹隆窯」(ちくりゅうがま)を見学させていただきました。素晴らしい作品をたくさん見せていただき、貴重なお話をお聞きすることができました。
九谷焼の陶芸作家・北村隆氏の工房「竹隆窯」(小松市)を見学させていただきました。
北村隆氏は現代九谷焼を代表する名工、匠の一人です。お忙しい中、貴重なお時間を割いていただきました。失礼があってはいけないと緊張して訪問させていただいたのですが、とても気さくに接していただき感激しました。
「竹隆窯」の内部。(パンフレットより)
この工房は、富山県利賀村にあった念仏道場を移築したものだそうです。内部の襖絵などは、北村 隆氏と親交のあった故・清水公昭氏(1911-1999。本名は清水睦治。第207世、第208世東大寺別当、華厳宗管長。東大寺大仏殿の昭和大修理を指揮。「今良寛」の異名もある名僧)によるもの。
工房パンフレット。現在、工房は、北村隆氏(1946-)・画像左と、息子である北村和義氏(1974-)・同右のお二人が中心となって運営されています。
北村和義氏は、2002(平成14)年に現代美術展受賞、2003(平成15)年に現代工芸美術展で初入選し、以後連続入選。2004(平成16)年に日展に初入選し、以後連続入選。その他入選や受賞多数で、将来を嘱望されている新進気鋭の作家です。
北村 隆氏、作品の前にて。
1946(昭和21)年、石川県に生まれる。1973(昭和48)年、日展初入選。以後、連続入選。日本現代工芸美術展初入選。以後、連続入選。1974(昭和49)年、朝日陶芸展入選。現代美術展初入選。以後、連続入選。1995(平成7)年、日展特選受賞。1996(平成8)年、日展無監査出品。2007(平成19)年、国際美術審議会・第33回連展。内閣総理大臣賞受賞「釉裏金彩群」。日展会友、日本現代工芸美術作家協会会員、石川県陶芸家協会会員、伝統工芸士認定。(パンフレットより転載)
竹隆窯工房の中の襖絵。
北村隆氏と親交のあった東大寺の故・清水公照氏によるもの。
同じく襖絵。
総欅造りの「仏間」。
工房内には、弁柄壁の「床の間」や、茶室「竹隆庵」もあります。「竹隆庵」は江戸時代の小松城の茶室を移築したものだそうです。
「船絵馬」。
工房内に飾られています。北前船の時代には海難事故が多かったので、殆どの船主が持ち船の航海安全を祈願して神社にこのような船絵馬を奉納したそうです。
北村隆氏は、北前船に代表される地域間交流に関わる歴史文化の継承活動にも非常に熱心に携わっておられます。
「北前船」の絵皿。
北村隆氏が好んで取り上げておられるテーマです。北村隆氏は「北前船は実際に存在した史実であり、文化でもある」とおっしゃいます。また、実際の北前船を忠実に模写しただけでは駄目で、陶芸の世界でいかに表現するかが難しいそうです。鎖国時代に日本海を縦横に行き来した北前船の証を作品に残したいという、非常に強い思いを持って作品製作に取り組んでおられるように感じました。
同じく、「北前船」の絵皿。
同じく、「北前船」の絵皿。
陶芸だけでなく、北前船に関する興味深いお話もたくさんお聞きすることができました。
故・マイケル・ジャクソン氏直筆サイン入りの陶額。
北村隆氏は、1988(昭和63)年12月、日本公演で来日した故・マイケル・ジャクソン氏(1958-2009)に陶額を贈呈しました。贈呈した陶額は2種類で、いずれも直径35の円形のもの。一つは、金箔に桜花を散らし中央に似顔絵。もう一つは、九谷色絵で似顔絵を描いたもの。
日本公演を企画したプローモーターの知人より依頼を受け製作。同年12月21日に東京の明治記念館で贈呈式が行われ、北村氏が直接、ジャクソン氏に作品を手渡しました。
工房に展示されているのは、ジャクソン氏に贈呈したものと同じデザインのもので、ジャクソン氏の直筆サインが入っています。
北村隆氏は、「気さくな人だった」と早すぎる死を悼み、「もう一度、活躍する姿を描いてみたかった」と新聞社の取材に対しコメントを寄せておられました。
復元北前船「みちのく丸」のロマン北國新聞社など日本海側の新聞社9社は、北前船を復元した木造帆船「みちのく丸」で、2011年夏に、北海道から島根県までの9道県の北前船ルートにあたる港を巡る事業を計画しています。計画では、7月中旬に出港し、青森-北海道-島根へ一路南下。帰途は島根-福井-石川-富山-新潟-山形-秋田の関係港に寄港しながら日本海沿岸を北上するもの。航程の大半は曳航されますが、寄港地では当時の航法での帆走光景の公開も計画されています。
なお、北村隆氏は、石川県銭屋五兵衛記念館の館長氏達とともに、このイベントの実行委員を務めておられます。
予定では、2011年8月7日に金沢港入港。翌8月8日に一般公開(体験航海もあり)が行われるそうです。詳細は、北國新聞にて後日発表されるとのこと。
みちのく丸は国内最大級の復元北前船(千石船)で、北前船の復元船では国内で唯一、航行可能なもの。2005年11月進水、全長32.0m、帆柱高 28.0m、載貨重量150t(千石積に相当)。
北前船とは、江戸時代から明治時代にかけて、上りでは対馬海流に抗して、北陸以北の日本海沿岸諸港から関門海峡を経て瀬戸内海の大坂に向かう航路(下りはこの逆)及び、この航路を行きかう船のことです。西廻り航路の通称でも知られ、航路は後に蝦夷地(北海道・樺太)にまで延長されました。