備考
Thouvenel Henry チェロ (1920年頃|フランス・ミルクール)
本器は、19世紀末から20世紀初頭にかけてフランス・ミルクールにて活動した製作家 Thouvenel Henry(トゥヴネル・アンリ)によるチェロです。ミルクールらしい端正な作風を基礎としながら、柔らかな表板アーチと丁寧なf孔まわりの処理が印象的で、落ち着いた佇まいを持った一本です。
外観は、深みのある琥珀色のニスが美しく、長い年月を経て生まれた自然な風合いが魅力を高めています。過度な装飾性はなく、製作家としての実直な姿勢が素直に表れた仕上がりといえます。
音色は、中低音域に豊かな厚みと温かさがあり、同時に上声部には明瞭な輪郭が感じられるのが特長です。過度に強い主張をしないため、ソロから室内楽、合奏まで幅広い場面で安定した表現を可能にします。ボウイングに対して柔らかく応え、長いフレーズを無理なく歌わせることができる、扱いやすい音響特性を備えています。
1920年頃のフランス製チェロとして、実用性と音楽性のバランスに優れた一本。古い楽器らしい響きの深みを求めながらも、演奏上の扱いやすさや応答性を重視される方におすすめいたします。
ご興味のある方は、ぜひ店頭にてお試しください。
木の鳴りが自然に伝わる、美しいフランスらしい音色を感じていただけると思います。
【鑑定家紹介】
Zdeněk Bělohládek(ズデニェク・ベロフラーデック)
チェコまたはその周辺地域で活動する、弦楽器の鑑定・査定を専門とされています。