備考
Raffaele Gagliano(School)です。状態が非常に良く、完璧なコンデションです。ドラゴンヘッドも本人オリジナル。一昔前にチェコのスピルデン工房(Spidlen)のオーナーが指板修理を行いましたが、これも完璧なものです。
また、この楽器は、"The Suk Trio"のメンバーだったJosef Chuchro氏(1931-2009、ヨゼフ・フッフロ)が若い頃に愛用していたものです。チェコフィルとの共演でこの楽器を使用したこともあります(アルバムがあります)。
素晴らしく良く鳴ります。試奏していただければ、この楽器の良さをおわかりいただけます。まさしく逸品と言え、非常に貴重なものです。
パーツ類は全て当社でセットアップ済。
プロ奏者、ソリストの方に自身を持ってお薦めします。
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Raffaele Gagliano(1790-1857)
Giovannni Gaglianoの息子。ナポリで、弟Antonio Gaglianoと働いていました。彼単独のサインもしくはラベルがある楽器は作らなかったようで、ラベルは"RAFFAELE, ANTONIO GAGLIANO"となっています。兄弟のラベルのあるバイオリンは、ガリアーノの伝統的なスタイルを守っています。1807年から1839年頃にかけての作品が絶頂期のものです。
品質が均一な整形、しっかりした材料、きちんと形作られたスクロールなど、彼らの技量はとても優れたものでした。枯れた黄色、オレンジがかった茶色、赤みがかった茶色などの色合いのニスが、際立って豊かに施されています。また、中程度の大きさに生育したとても素晴らしいスプロース材、見事に成形されたメープル材が多く用いられています。全体的な品質は多くの作品で特筆すべき完璧さと高性能のものです。オーケストラ用の楽器としてはかなり高い水準の一級品です。 晩年に下記のような「商売」に手を染める以前の作品には優れたものが多いようです。
しかし、Gaglianoという名前は、その楽器の本来の価値を超えた暴利とも言える高値をつけられるという点で、当時の楽器商に素晴らしいビジネスチャンスを与えました。兄弟はその晩年、そういうビジネスで彼らの名前に「相応」かつ「正当な」富を彼らにもたらす商業ベースの楽器製造に自ら傾倒するに至りました。それは全ての神の中で最も嘘つきの神への巡礼旅であり、本来の仕事に対する自身の才能を自ら粗末に扱うことでもあり、ありとあらゆるグレードとモデルのものを無差別に生み出しました。そうして作られた楽器のいくつかは広くて雑な仕上げのf字孔をもち、多くが平凡なニスで仕上げられています。二重のパーフリングがちゃんと施されているものがある一方、パーフリングが無かったりするものさえあります。それらは希少で「安物」ではないものとして売られました。このような退廃的状況でしたが、彼らの粗製濫造品は、より良く仕上げられたドイツ製品によって市場から駆逐されました。
結局、兄弟は(彼らが確実なものとして期待した世間一般の評価を得ることに失敗し)製作を止めました。その後、彼らの関心は楽器輸出に向けられ、その方面で当時のイタリアで最大手の一角を占めるに至りました。
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