ストラディブログ
欧羅巴徒然紀行
February 27, 2010

フランス・ミルクール その1・ミルクール国立弦楽器製作学校 2010.01.22

2010年1月下旬(日本時間で1月16日出国〜25日帰国)、商用でフランスのパリとミルクールを訪問してきました。北半球の大寒波、ヨーロッパも記録的な寒さと雪でしたが、私達が訪問した時は寒波のピークは終わっていて順調に旅行することができました。訪問の主目的は楽器の買付けですが、今回は日程を多目に確保し、前からとても興味があったミルクールやパリの現代作家を訪問取材してきました。なお、今回旅行の取材では、現地コーディネートならびに仏語通訳でJCOM(ジーコム)の浜さんのお世話になりました。この場を借りて厚くお礼申し上げます。

ミルクール国立弦楽器製作学校の正面玄関。ミルクール国立弦楽器製作学校"Ecole Nationale de Lutherie"は"Lycee Jean-Baptiste Vuillaume"内にある弦楽器製作科です。"Lycee Jean-Baptiste Vuillaume"は日本の専門学校に該当し、科学、経済学、文学、電子工学の各科があります。それに加えて、この国立の弦楽器製作科も併設されています。1988年に学校名が"Lycee Jean-Baptiste Vuillaume"(ミルクール生まれの高名な製作者Jean-Baptiste Vuillaumeにちなんだもの)となり、1970年以降、フランス随一の弦楽器製作科がある学校として知られています。近年、各科合計で600名を超える学生と約60名の教師を抱える規模になりました。そのうち、35人前後が弦楽器製作科の学生です。なお、ミルクールにはJean Jacques Pages氏が主宰する私立の弦楽器製作学校もあります。

弦楽器製作学校の建物。
"Lycee Jean-Baptiste Vuillaume"の建物は、二つの部分からなります。
一つは1828年に創立された男子専用の主要大学(師範学校)、もう一方は1905年に建てられた女子高(創立はその少し前)です。1928年にミルクール師範学校は、公共担当大臣Edouard Herriotの臨席を得て、創立100周年を祝いました。彼は後に国会議長となる人物です。1970年、女子高は師範学校に合併されました。
学校の建物は、長い歴史の中で何回か増改築が行われました。1968年に国営化されました。1971年にスペースの都合で規模を拡張し、空き地へ師範学校を移転。1977年からは、総合学校になりました。その後、1994年、近くに農業大学の校舎が建てられました。また、弦楽器製作学校は1999年に立派に改修され増築(コンサートホールなど)されました。2002年から2003年にかけ新しい寮が建設されました。

校長(PROVISEUR)・LYDIA ANIKINOW氏と。
LYDIA ANIKINOW(リディア・アンキノブ)氏は、気さくな感じの女性です。予めアポイントメントはとっていたのですが、東洋より訪れた(東洋人はミルクールではまだ珍しいそうです)私達をとても暖かく迎えていただきました。弦楽器製作学校は3年制で、各学年は10数人で構成されています。毎年、約150人が受験し、2009年度は11人が合格しました。日本人はこれまで1人だけ卒業したそうです。受験(書類選考-試験-面接と数次の審査が行われます)に年齢や国籍制限はありませんが、フランスの高等学校卒業以上の学力が必要とされ、フランス語も日常会話以上の能力が要求されるので、高い競争率で選抜された学生のレベルはかなり高いとのこと。

1年生の実習光景。
1年生担当の教師と、女子学生。この学生はベルギー人だそうです。現在、フランス人以外に、イタリア、ベルギー、ドイツ、韓国など世界各国からの留学生がおり、年齢は17歳から25歳までが在籍しているそうです。授業内容は、一般教養としてフランス語、英語、経済学、経営学。それに芸術学と、楽器演奏が必須となっており、狭義の製作技術だけでなく、その裏付けとなる理論と教養、語学、工房経営に必要な経営知識を体系的総合的に学ばせる合理的なシステムとなっているそうです。

同じく1年生の実習光景。
1年生は工具の使い方等、楽器製作の基礎技術を学びます。一般教養や音楽理論等の授業もあり、非常に密度の高い教育が行われているようです。

同じく実習光景。
若い学生も多いのですが、皆さん目が輝いていて、弦楽器製作者を目指す真剣さと熱意が伝わってきました。

同じく実習光景。
彼が、現時点では最年長(25歳)の学生だそうです。

2年生の実習光景。

同じく2年生の実習光景。
右手前の人物は2年生担当教師です。

同じく2年生の実習光景。

同じく2年生の実習光景。
教師がスクロールの工作作業を指導しているところ。

3年生の実習光景。
ニス塗り作業中です。彼は3年生で最優秀の学生だそうで、将来が嘱望されています。

3年生担当教師のコンエ氏。
パリのバトロー工房で働いていた経歴があり、その後、ミルクールへ拠点を移し、本校で教鞭もとっているそうです。

3年生の実習室。
型枠で成形中のチェロ。

3年生の実習光景。
チェロのバスバーを整形中です。彼の前掛けの胸の部分に、本校のマークがプリントされています。

3年生の実習光景。
チェロの製作をしています。

3年生の実習光景。
チェロ表板の整形中。

3年生の実習光景。
整形が完了したチェロ表板。3年生は卒業課題として、ストラディバリウスなど名品のコピー製作、論文(製作内容ならびに製作方針の理由について論述したもの)、面接形式での厳しい口頭試問が課せられているそうです。要求される論文のレベルが高いことが特徴で、さすがは理論重視の国柄だと感心させられました。(日本人の大部分は、フランスは「芸術の国」だという曖昧でソフトなイメージしかもっていないようです。しかし、フランスは哲学や原子力技術に見られるように理論大国・科学技術大国でもあるのです。ヨーロッパの大国としてフランスの重要性は今後ますます増大していくでしょう) なお、元々優秀な学生ばかりで、目的意識も極めて明確なためか、ほとんどの学生が無事卒業して弦楽器製作の道=名前の通った工房へ弟子入りして研鑽を積む等=へ進むそうです。

ミルクール国立弦楽器製作学校のパンフレット。

同パンフレットの裏表紙。

同パンフレットの中身。
受講案内等が簡潔に説明されています。内容について興味のある方はお問合せください。

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